なぜに父親が問題?

他の研究者が良い仕事をすると、つい、その人の親はどういう人なのか、ということが気になってしまう。多くの場合、親も学者だったりする。あるいは、それなりの社会的地位のある人だったりする。
他人とうまくコミュニケーションを取れている人がいたとする。「きっとこの人の家庭は健全だったんだなぁ」と勝手に想像して羨しく思う。
自分がコントロールできず、持っていないものについて、それを他人が持っていて、そのことを羨しく思うとしたら、その羨みは決して消えることのないものとならざるをえない。だから辛い。
でも、誰でも、その人がコントロールできず、持っていないものはあるだろう。たまたま自分の場合は、健全な家庭であり、世間に出して恥ずかしくない父親であった。
父親が自分が受けた悪影響の中でも最悪のものを私に及ぼしたとしよう。だが、それはたまたま最悪な影響を父から受けたということ以上のものではない。人によっては、立派な父親を持ち、例えば幼いころに虐待を近所の大人から受けた、などという人もいるかもしれない。その人にとっては、出自は全く問題ではない。