夢の内容は、

こんな感じ。

洗濯機の夢

かつて住んでいたN町の家に居る。ついさっき、父親がその家を出ていった。父親は母親と離婚したのだ。

 静かになった居間にはまだ父親の酒臭い体臭が漂っている。自分は大人だし、父親が出ていったことに関しては淡々とした気持ちではある。

 どこからか、がらがらという音がしてくる。洗濯機が動いているらしい。風呂場の脱衣所まで行って、洗濯機を見てみると、果たしてそうであった。昔からある二槽式の洗濯機。現実には洗面台があった場所に、白い散乱光がやわらかく差し込む窓を背にして洗濯機は置いてある。

 よく見ると、洗濯をしているわけではない。衣類が洗濯漕に入っていないのだ。水が八分目まで入っていて、虚しくうずを巻いている。父親が家を出て行く前に洗濯機のスイッチを入れ、そのまま出ていってしまったのだ。

 かといって、彼が自分の衣類を洗濯しっぱなしで出ていったということではない。彼はそこで洗濯をし、衣類を持って出ていったのである。

 だが、不思議なことに、洗濯をした後だというのに水はまるで汚れていない。むしろ、空の洗濯機に水道水を注いだ直後のように、透明で清々(すがすが)しい水だ。まるで彼がこの家から去っていき、その後にはけがれたものは何も残っていないということを象徴しているかのように、水はきらきらと輝きながら、ただただ回っている。

 自分はこの有様をぼーっと眺めている。

 いずれにせよ、このように物事の始末をきちんとつけず、放っておいたまま去っていく、というのはいかにも彼らしい。そのような、彼らしい跡をおもいっきり残して、彼は出ていったのだ。彼は全てにおいてそのようにだらしなく無責任な人間であった、という苦々しい思いが広がってくる。